◆老子小話 VOL 602 (2012.05.26配信)
障子の穴をさがして
煙草の煙りが出て行った
(尾崎放哉)
たばこを吸っていた人なら誰しも
経験があると思います。
障子が少ない今なら、窓を少し開けていると、
けむりが気の流れに乗って外に出て行くのを
見ることができます。
気の流れは目に見えませんが、
線香でもたばこでも、けむりを追っていけば、
空中を漂いつつも気に誘われて外に流れていきます。
放哉さんは孤独の時間の中で、けむりの行方を
じっと追っていったのでしょう。
まるで、けむりが障子の穴を探しながら、
自分に別れを告げるように思ったのか知れません。
けむりの形というのは常に変化していきます。
最初は小さい濃い煙だったのが、次第に
大きくなり薄くなり消えていきます。
この句で面白いのは、けむりがアメーバのように
形を揺らしながら障子の穴に引き込まれる時空と
けむりにすら取り残された自分をうまく表現して
いる所だと思いました。
気の流れの変化を楽しむゆとりは持ちたいものです。
有無相生