◆老子小話 VOL 597 (2012.04.21配信)
天下多く一察を得て以って自ら好む。
譬えば耳目鼻口の皆明らかにする所有りて
相通ずる能わざるが如し。
(荘子、天下篇)
世のひとは、ある局限された見地を得て、
これに自分だけの満足を覚える者が
多くなった。譬えるなら、
耳目鼻口が各々の働きをしても
お互いに相手の働きを兼ねることが
できないのと似ている。
荘子のこの言葉は現在も真理を衝きます。
一番当たっているのが官僚組織です。
各省庁でのみ通じる規範に満足し、
自組織の権益を優先する。
本来なら、組織間の連携をして
他部門の働きを補い合いながら、
全体の目標を目指していかねばならないのに。
組織の専門化が進むと、他に任せておけばよいと
いう風潮が生まれてきます。
この傾向は官僚だけでなく、政治の世界にもあります。
与党と野党の対決姿勢も同じです。
野党はまず選挙で与党にならなければいけないので、
与党の提案に難癖つけて国会解散に持ち込みます。
官僚も政治家も、国民のための公務と
肝に銘じて欲しいものです。
「局限された見地」に惑わされるのは国民も同じです。
消費税増税が何に使われるかはっきりしないまま、
YESというのは止めましょう。
最後はうやむやで通してしまうのが今までの政治です。
耳目鼻口という、いろんな見方や立場から意見をいうのが、
国民の使命ともいえるでしょう。
有無相生