◆老子小話 VOL 592 (2012.03.17配信)
人々は「わがものである」と
執著した物のために悲しむ。
所有しているものは
常住ではないからである。
(ブッダのことば、スッタニパータ)
「ブッダのことば」(岩波文庫)の、
「8つの詩句の章」よりお届けします。
資本主義社会では、個人の財産は、
自分が稼いだものだから「わがものである」
と考えられる。
財産に執着すると、投資に躍起になり、
失敗して損をすると気持ちは穏やかではない。
親が子供に対し「わがもの」と考えると、
子供が所帯を持ったあと、嫁といさかいを起こす。
世の中に自分のものなど一つもないとブッダはいう。
お金だってわが子だって、自分の近くにいつまでも
とどまっていたら、気が重くなる。
離れていくから、気が軽くなる。
執着した物から離れることで見えてくる世界がある。
見えたあと、執着していた物との付き合い方が変わる。
先週お届けした後鳥羽院も、都から隠岐に流されて、
かやぶき屋根から見る月の美しさに気がつきました。
人生では、執着した物からの別れが突如やって来る。
そんなとき、ブッダのことばは支えになる。
有無相生