◆老子小話 VOL 591 (2012.03.10配信)

命あればかやが軒端の月もみつ

知らぬは人の行く末のそら

(後鳥羽院)

 

蕪村の面白さを教えていただいた

森本哲郎氏の「日本十六景」(PHP文庫)を

今読んでいます。

その中で紹介される後鳥羽院の歌をお届けします。

後鳥羽院は、承久の乱で敗れ隠岐の島に島流しに

なって、そこで生涯を終えました。

かやぶき屋根の軒端から月を眺めて、

行く末を案じているわけですが、

そこに命の尊さも感じていると思われます。

「命あれば」こそ、廃屋に暮らす境遇でも

月の美しさを垣間見ることができる。

悠久の自然の美しさと限りある生。

「どうして生かされているんだろう」

「いつまで生かされるのだろう」

という運命(自然)への問いかけがある。

自分と自然が一体となる瞬間です。

命あって月を仰ぐ自分と、

月から自分を見守る自然の魂がある。

命果てて月のある空の彼方に行けるとしたら、

「どうして」とか「いつまで」とかは

どうでもよくなる。

美しさを感じられる限りは、

美しさを楽しめればよい。

 

有無相生

 

 

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