◆老子小話 VOL 590 (2012.03.03配信)

雛祭る 都はづれや 桃の月

(蕪村)

 

今日はひな祭りです。

子供のときは、お雛様をかざる女の子の

うちが羨ましかった記憶があります。

端午の節句のかざりに比べると、

内裏雛の前に三人官女やお供の人形が並び、

見ているだけで楽しくなります。

今では飾る場所が取れず、内裏様だけを

飾っているうちが多いと思います。

蕪村も、都会はずれの田舎を訪れたときに

雛飾りを見かけ、桃の節句を知りました。

桃の花香る垣根越しに、質素な雛人形を

のぞいたシーンが目に浮かびます。

そこに住む娘さんの顔は見えないが、

飾って健康を祈る家族の思いは伝わってきます。

桃の香りに乗って。

「桃の月」は、3月というより、

桃の上には月が輝いていた方が絵になります。

蕪村は画家でもあったので、

雛飾りにカメラの焦点をあて、それを飾る家、

そして周りの桃の木、さらに全てを照らす月と

カメラを引きながら全景を映し出す手法を

俳句に取り入れているようです。

何気ない句ですが、蕪村の目の動きを楽しめる、

一枚の絵を与えてくれます。

 

有無相生

 

 

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