◆老子小話 VOL 583 (2012.01.14配信)

天之生物、必因其材而篤焉。

故栽者培之、傾者之覆。

(中庸、第六章)

 

天の物を生ずるは、

必ずその材によりて篤くす。

故に栽つ(たつ)者は、これを培い、

傾く者はこれを覆す。

 

年が開け、はや2週間が経ちました。

今年の抱負を考える間もなく、時間は過ぎ去ります。

今回は「中庸」より、天の厳しさを教える言葉を

お届けします。

「天が万物を生育するとき、必ず物の素質に従って行う。

(苗を例にすれば)しっかり根付いているものは、

さらに養って生育を助けるが、傾いているものは、

引き抜いてしまう。」

自然の世界は、人間の世界と違って万物平等ではなく、

ものの素質に従って、厳然と淘汰が進む。

老子第五章にも、

「天地は仁ならず。萬物をもって芻狗(すうく)となす。」

といわれ、天地は冷酷で万物を犬のわら人形のように捨てる。

このような厳しい自然の中で、人間は寄り添い助け合いながら、

社会を築いてきました。

自然災害は容赦なく人間社会を襲います。

どんなに準備していても、被害が出るのは避けられません。

そんな状況に遭遇したとき、しっかり立ち上がる(栽つ)か、

滅入ったまま(傾く)でいるかで、天の扱いは変わってくると

「中庸」の言葉を受け取ることもできます。

しっかり立てば、栄養は根から少しずつやってくる。

少なくとも気持ちをしっかり持つことが出発点です。

日本の社会が今存続しているのは、そんな祖先の気持ちの

お陰です。

日本の復興を支える言葉といえそうです。

 

有無相生

 

 

戻る