◆老子小話 VOL 575 (2011.11.19配信)

細推物理須行楽

何用浮名絆此身  

(杜甫、曲江二首其一)

 

細かに物理を推すに須らく行楽すべし

何ぞ用いん 浮名もて此の身を絆(ほだ)すを

 

中国の詩人杜甫の「曲江二首其一」の

最後のところの言葉をお届けします。

「物の道理を細かく見ていくと

結局人生、面白おかしく暮らすべきもの。

虚名にわが身を縛られて暮らすのは無用だろう。」

先週末、信州に紅葉を見に行きました。

幸い天気がよく、秋光のもと金色に染まる山を

拝むことができました。

今日は雨模様となり、時機を逃すと同じ景色に

出会えないことがわかります。

若いときの旅は、見るもの聞くものが珍しく新鮮で

そこから吸収できることは無限にあります。

歳をとると、体は動かず感動が少なくなります。

つまり時間の経過とともに全てが移ろっていくので、

行楽するタイミングは限られるという道理です。

虚名というのは「実力以上の名声」ですが、

簡単に言えば、他人が自分を見るときの肩書きです。

肩書きにとらわれ、他人の目を気にして、

したいこともできずにやり過ごすのは惜しい。

浮名を忘れ出かけた行楽の中で、

新たな出会いが生まれるかもしれません。

杜甫は、「曲江二首其二」の最後で、

「共流転 暫時相賞莫相違」

(出会った君と僕は時空を流転していくから

しばしのときを互いにほめ合い仲良くしよう)

と締めくくる。

生きる喜びはいずこも不変である。

 

有無相生

 

 

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