◆老子小話 VOL 574 (2011.11.12配信)

一人来て一人訪ふや秋のくれ

(蕪村)

 

秋も深まりますと、蕪村の句が恋しくなります。

秋の暮れの「出会い」の句です。

日が明るいうちはやることも多く

街も道も人通りが多く、あまり孤独を感じません。

でも日が暮れてそれが消えると寂しさが身にしみます。

今ならケータイで誰かとつながって、

そんなに孤独を感じないかもしれません。

蕪村の時代は、誰かを訪ねて会いに行くかしか

「出会い」は生まれません。

ひとり住まいの自分を訪ねてきてくれた人も

一人でやってきたというだけの句ですが、

そこに普段顔をあわせなかった人が来たとすると、

「お前も寂しくなったのか」と共感も生まれる。

ひとりで寂しさを我慢するより、二人で寂しさを

分かち合える幸せを感じたりもします。

遠い道のりを訪ねて来てくれたなら、その幸せも

ひとしおです。

「猿どのの夜寒訪ひゆく兎かな」(蕪村)

という鳥獣戯画的な情景もありますが、

山里に住む自分(猿)を訪ねた客(兎)を

駆り立てたのは、夜寒が染みる孤独でしょう。

夜寒と孤独を同時に感じるのが秋の暮れ。

それを「ひとり」を2回使ってうまく

詠いあげた句に思いませんか。

 

有無相生

 

 

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