◆老子小話 VOL 572 (2011.10.29配信)
言ふ事があまり多くてだまつて居る
(尾崎放哉)
季語のない自由律俳句では、山頭火と並び
尾崎放哉も光を放ちます。
小豆島で孤独のうちに亡くなりましたが、
この句は、ひとりであると誰もが感じるときの
情景を表わしていていませんか。
ひとりの寂しさを紛らわすために、独り言をつぶやく。
最初のうちは。
ひとこと、ふたこと、短い会話を自分と交わす。
しかし、ひとりの日が一日、三日、七日と続くと、
その間に話すことがたまってくる。
言うことが多くなりすぎると、短い会話が、
一人語りになってくる。
一人語りになると、相手の相づちが欲しくなる。
「それで」とか、「なるほど」とかの反応である。
相づちにより、ことばが繋がれるからである。
けれど孤独の身では、相づちを入れるのは難しい。
だから多くを語りたいときは、じっと黙るようになる。
孤独の真っ只中にいるときのさまが心に浮かびます。
秋の夜長、声には出さなくても、自分に問いかけることが
増えてきます。
放哉の孤独に共感できたとき、ほっと安らぎを感じました。
有無相生