◆老子小話 VOL 568 (2011.10.01配信)
ある所をしりてなき所をしる、
是則ち空なり
(宮本武蔵、五輪書 空の巻)
新大関の抱負の言葉「万理一空」は、兵法三十五箇条にある。
ところが、この言葉は番外(三十六番目)に出てきて、
「表現しづらいので工夫して考えてくれ」と語るのみです。
そこで、五輪書より武蔵の「空」を探してみました。
「万理」は、よろずのことわり(万物を支配する原理)
ですから、その原理は「空」といっています。
武蔵は、兵法を述べるので、「兵法の原則は空」だという。
真剣で戦うので、兵法の目的は相手より先に相手を
切り倒すことにあります。
そのための技とその道理を教授するのが五輪書です。
技の道理を知るだけでは相手に勝てないという。
道理が及ばない所を知って初めて勝てるという。
それが彼の「空」である。
つまり道理を頭で追うのではなく、身体が自然に
動くまで、「うごきなき心」(水の巻、兵法心持の事)を磨く。
新聞には、「道はいろいろあっても目標は一つで、
それに向かい精励精進する」とあったが、「空」の
意味は深いので、そこの説明が欲しかった。
有無相生