◆老子小話 VOL 567 (2011.09.24配信)

をのづからあひあふときもわかれても

ひとりはをなじひとりなりけり

(一遍聖絵、第七)

 

近頃朝晩が急に涼しくなりました。

秋の夜長には、しんみりと一遍さんの歌を

口ずさむのもよいでしょう。

出家人の心得を歌にしたものです。

あちこち旅をしていろんな人に会っていました。

「をのずから」は、偶然の出会いですが、

旅ですから会ってもすぐに別れねばなりません。

それに昔の旅ですから、病に倒れたり、

追いはぎに殺されることもあります。

従って、出会いは一回限りが多かった。

出会う前はひとりで旅をし、出会いで片時心の

暖かさに触れ、またひとり旅を始める。

旅で出会うひともまた、ひとりで旅をする途中である。

「ひとりはをなじ」は、出会う前後の自分とともに、

出会う相手も指すように思える。

ひとの世は旅人同士が出会う場であり、

出会いは毎回違うから、その度を楽しく過ごしたい。

「おほかたのそらにはそらの色もなし

月こそ月のひかりなりけれ」が上の歌に続く。

「そら」を「出会い」とするなら、「これが出会いである」といった、

決まった出会い(色)はない。

出会いで触れる月(こころ)のひかりを浴びれば

いいではないかと言っているようである。

 

有無相生

 

 

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