◆老子小話 VOL 563 (2011.08.27配信)

象が人の作為によって本来の姿から

変えられてしまった、その哀れな状態こそが

「偽」なのです。

(高橋政巳、伊藤ひとみ、漢字の気持ち)

 

漢字の奥に潜む深―い話をまとめた

超面白い「漢字の気持ち」(新潮文庫)から

お届けします。

老荘は無為の思想といいますが、

「為」が象から来ているなんて全然知らなかった。

そういえば、「人に為をつけて偽(にせ)という字に

どうしてなるの?」という疑問はありました。

それを解いたのがこの本です。

体の大きな象が非力な人間のいうことをきく理由は、

子供のときに大きな杭に大きな鎖でつないで、

逃げようとしても絶対に逃げられないと

刷り込みをするためです。

象本来の荒々しさは人間によって手なずけられ、

命じられるままに動く従順な姿に変えられている。

「偽」には「作為を加えて本来の性質を変える」という

意味があることを漢字の形から教えてくれます。

そうして、無為とは「偽」から本来の為(象)に戻す

作業なんだと気づきました。

象と向き合うことが「対象」、象に心の形を当てはめる

のが「印象」と次々と合点がいきました。

漢字には人類の歴史が秘められている。

中国にも象がいたから生まれた字でした。

 

有無相生

 

 

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