◆老子小話 VOL 559 (2011.07.30配信)

生命には成長がない。

人の年老いて行くことを、

たれが成長と考えるか。

老は成長でもなく退歩でもない。

ただ「変化」である。

(萩原朔太郎、「桃李の道」序)

 

高校のときに買った「青猫」(新潮文庫)

からのお届けです。

怪しさに惹かれた詩人ですが、「桃李の道」

には「老子の幻想から」の副題がついています。

「成長」は背が大きくなる生長でなく、

「一つの標準すべき価値の上に、深く根付いた

木の枝葉をひろげて行くこと」である。

「生命は流れている」ので、成長はあり得ない。

老いも変化であり、価値の積み重ねではない。

詩は詩人とともに変化するだけで、進歩はない。

従って、今も未熟の初学詩人に過ぎないという。

老いると知識の宝庫になると世にいうが、

語れるのは、考え方の変化だけである。

それがよかった悪かったまでは語れない。

なぜなら、変化は人それぞれだからである。

同じ考え方をしても、人生の岐路での

道の選択はひとにより変わってくる。

従って、道の選択に正解はない。

選択の先に選択を続けるしかない。

「生命は錨をもたない船」であるから

帆の向きを変えつつ、風のまま流れていく。

 

有無相生

 

 

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