◆老子小話 VOL 553 (2011.06.18配信)
惻隠之心、仁之端也。
(孟子、公孫丑章句上)
惻隠の心は、仁の端なり。
性善説で有名な「孟子」より、有名なたとえ話をお届けします。
目の前で子供が井戸に落ちかけていたとき、
ひとは誰でも驚きあわて、いたたまれない感情になる。
どうしてそのような感情になるのか?
子供の親と親しくなろうとする気持ちが働いたわけではない。
人命救助で表彰されたいと願ったわけでもない。
黙って見ていたら、ひどい人間と非難されると思ったのでもない。
「いたたまれない感情」が自然に起こったのである。
このいままれない感情、惻隠の心が、仁の始まりという。
仁の漢字を見れば、人に二と書いてある。
ふたりの間に生じる親しみいつくしむ心である。
いま自分があるのも、親というふたりの優しさのお陰である。
その親があるのも、その親の優しさのお陰である。
ということは、ひとの歴史は惻隠の歴史ということになる。
祖先の惻隠を未来に伝えていくのがわれわれの務めなら、
原発依存を縮小していくのが当然の流れといえよう。
有無相生