◆老子小話 VOL 545 (2011.04.23配信)
輿論は常に私刑であり、私刑は又常に娯楽である。
たとひピストルを用ふる代りに
新聞の記事を用ひたとしても。
(芥川龍之介、侏儒の言葉)
侏儒(しゅじゅ)はこびとである。
こびとは御伽噺に出てくる。
芥川はこびとのつぶやきを「侏儒の言葉」に残した。
新聞に毎日のように世論調査の結果が出ている。
政権の危うさや原発事故の初動の甘さなど。
結果の原因をいろいろ憶測しても始まらない。
輿論は世の中の人の意見だが、全ての意見ではない。
限られた意見をもって、それが揺るがない真実であるかのように
非難するのは私刑であり、娯楽にも等しいという。
物事が決まったときは、組織や集団にとって最善の判断をしている。
問題は、組織や集団をどの範囲で考えていたかによる。
福島がこれほど世界で有名になったことはない。
原発の怖さを甘く見ていた東電と政府が世界から信用されなくなった。
輿論の是非を恐れず、正確な情報を世の中に公開し、
風評の不安を払拭してほしい。
放射能汚染を理由になされる私刑は恥の何物でもない。
侏儒という妖精のつぶやきは、この世の不思議をえぐる。
有無相生