◆老子小話 VOL 544 (2011.04.16配信)

Shakespearean fish swam the sea, far way from land;

Romantic fish swam in the nets coming to the hand;

What are all those fish that lie gasping on the strand?

(W.B.Yeats, Three Movements)

 

対訳イェイツ詩集(岩波文庫)から老荘的な詩をお届けします

hand, land, strandと韻を踏んでいるので、英語で載せます。

「シェイクスピアの魚は、はるかな沖を泳いだ。

ロマン派の魚は、手繰られる網の中で泳いだ。

岸に放り出され喘いでいるこの魚どもは何だ?」

まず、陸(岸)と海の2つがあります。

陸はこの世(現実)で、海は幻想の世界(あの世)です。

魚は人間でしょう。

シェイクスピアの世界は、現世のしがらみから遠ざかり、

幻想の世界に遊びます。いわば逍遙遊です。

ロマン派の世界は、現世に後ろ髪を引かれながら、

心だけはある範囲内で自由に遊ばせる。

それじゃ、現世にどっぷりつかって、打ちひしがれる

魚は、何というのかと問う。

イェイツにしてみれば、この魚がケルトの文学(芸術)を

生んだ人たちと言いたげです。

「現実の世界でのたうち回る」生きた人間から生まれた

口承の文学である。

老荘的思想からすると、シェイクスピアの世界のように

現世的価値を捨て、絶対の自由に心を遊ばせるのが

理想なのですが、イェイツの第三の魚のように、

現世を捨てずに現実と幻想が交錯するケルトの世界もまた、

魅力ある世界に見えてきます。

幻想の世界に連れ去る妖精が出没するアイルランドには、

「妖精に気をつけて」という交通標識(Leprechaun crossing)

あるという。

妖精と共生できる心の余裕を生み出した文化と歴史を

見習いたいですね。

 

有無相生

 

 

戻る