◆老子小話 VOL 538 (2011.03.05配信)
歴史が病める世界のために万能な処方箋だ
ということである。
(寺山修司、幸福論)
歳をとってくると、歴史、とくに自分の過去を振り返り、
それが幸福だったのかを考える機会が増える。
そういったときに、寺山さんの「幸福論」(角川文庫)
は、納得いく見方を提供してくれる。
過去はストーリー(思い出)であり、
歴史は一冊の書物に過ぎない。
つまり、歴史は「作り変えられるもの」、過去を望み通りの
真実に再創造していく構想力(想像力)が必要という。
再創造して過去を思い通りに組み立て直すだけでなく、
「何よりもダメな日本」の未来をも組み立て直す方向に、
自己を投企するのが、寺山さんの幸福論のようである。
自分の歴史が幸福かどうかよりも、自分の過去を再創造できる
自由が幸福の源になるといえようか。
その想像力を持てなかった永山則夫の話、キリストに関わる
歴史改造の経過など、ストーリーをどう再創造するかで、
未来が偶然的に決まっていく真実を知ることができた。
有無相生