◆老子小話 VOL 537 (2011.02.26配信)

彼らが癒えることは、私たちも癒えることである。

(多田富雄、生命の木で)

 

昨年4月21日に亡くなられた免疫学者である氏のエッセイ

「生命の木の下で」(新潮文庫)よりお届けします。

麻薬の生産で有名だったタイの「黄金の三角地帯」に、

麻薬中毒の集団治療を行う、メーコック・ファームがある。

麻薬には伝染性があるため、村民全体が中毒患者となり、

子供が都市に売られ、HIV感染して村に戻り子を産み、

また村から追放されるという負の連鎖が続く。

それを救うには、村全体の集団治療と捨てられた赤ん坊の

救済である。

前者を行うNGOがピパット氏の「メーコック・ファーム」であり、

後者を行うNGOがプラコング氏の「サポートザチルドレン」である。

多田さんは「彼らを困難なこれらの仕事に駆り立てるものは何か?」

と自問する。

麻薬に犯された患者や死の淵にある赤ん坊が生命を回復する過程に

参加することで、自身の生命も回復するからと答えを得ている。

我々の心も自力では回復できないほど傷ついていたのである。

NGO活動は、病んでいる私たち自身のためでもある。

タイガーマスク運動も、寄付をすることで癒されることが動機のようである。

 

有無相生

 

 

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