◆老子小話 VOL 534 (2011.02.05配信)
老いが恋 わすれんとすれば しぐれかな
(与謝蕪村、自画賛)
蕪村58歳のときの句である。
老年近くなって祇園の芸妓小糸に惚れたのが「老いが恋」。
年甲斐もなく若い娘とつきあうのは止めろと
周りから迫られ、努めて忘れんとする蕪村。
そう思う蕪村の心に時雨が重なる。
しぐれは、「秋から冬にかけて起こる、
一時的に降ったり止んだりする雨や雪」である。
若い娘への恋心は、忘れようとすればするほど、
通り雨のようにふいと蕪村の心をよぎる。
しぐれは、蕪村が住む京都の冬の風物詩である。
そして、しぐれは冬の心の風物詩となる。
まるで、歌謡曲の前ふりのような文になっています。
湘南乃風の「恋時雨」は夏の終わりに降りますが、
蕪村の「恋しぐれ」は、薄曇りの冬空から、
老いらくのかなわぬ恋心にそっと降り注ぎます。
蕪村の年に近くなり、この句にジーンと来ます。
若くても年をとっても、恋は生きる力を与えてくれます。
有無相生
お詫び:
メルマガでは、「湘南乃風」を、「湘南之風」と誤記しました。
ここであらためてお詫びいたします。