◆老子小話 VOL 533 (2011.01.29配信)
多様なものの中に、ある共通する型を発見する能力、
それが仮説を立てるコツだと言っておきたい。
(丸谷才一、思考のレッスン)
「思考のレッスン」(文春文庫)P212よりお届けです。
ものごとを考えるということは、「仮説を立てること」である。
仮説は、外見に惑わされずに、さまざまの事象に埋もれる
共通部分を発見することである。
仮説は、思考の「型」であり、型には名前をつける。
型は、反論や批評や傍証を得て、より本質に近づいていく。
ものを考えるときに、詩(ユーモア、アイロニー)が付きまとう。
詩が抜けた考え方は、堅苦しくて楽しくない。
楽しくないものは身につかない。
丸谷さんの思考学は、きわめて簡潔で明快である。
この思考法を実践したのが、「老子」である。
さまざまに変転する自然と社会の流れを、
無から生まれ、無に帰っていくエネルギーの流れと考え、
その仮説(型)を、「道」と名づけた。
また、老子全81章が詩からなり、アイロニーに満ちている。
権力を志向する政治家は、少しでも目立とうと、有言未実行となり、
それを批判する政治家も、国民を考えずに反論に終始する。
大自然に生きる生き物は、えさを分け合って健気に生きている。
人間だけが、えさや権力の取り合いをして、互いを潰しあっている。
この愚かさは人類が滅びるまで続くとして、
「どう生きればよいか」を老子は教えてくれる。
丸谷さんの本から、老子を見直すことができた。
有無相生