◆老子小話 VOL 531 (2011.01.15配信)
宇宙の創造主は、どこか遠い空の果てで
レース編みをしている。
どんなか弱い光でも通す、
上等の糸で編まれるレースだ。
(小川洋子、「博士の愛した数式」)
「博士の愛した数式」(新潮文庫)の192ページに出てくる
博士のお世話をする私の心の言葉です。
この言葉を見て、老子第73章の
「天網恢恢、疎而不失」(天網は恢恢、疎にして失わず)
を思い浮かべました。
天網は、創造主が編むレースなんだと。
網目は粗いが、すべてを被っている。
網目は目に見えないが、休みなく動き続ける。
小川洋子さんの小説は、われわれを取り巻く世界を
冷たく、そして優しく表現する。
そして、この小説では、天網の神秘に挑むのが、
科学者であり、数学者であることがわかる。
網目を解いても解いても、網目は現れる。
すでにヒットし映画化された小説を、後れて読んだ。
読んだ後心地よいのは自分だけであろうか。
有無相生