◆老子小話 VOL 525 (2010.12.04配信)
ひるは世界であり、夜は宇宙だ。
(岡本太郎、「美の呪力」)
岡本太郎の「美の呪力」(新潮文庫)は、
大阪万博の頃書かれた文章だが、
独自の視点で生を捉えており興味深い。
これは「夜-透明な渾沌」の冒頭の言葉です。
昼は白日のもとにすべてがあらわになり、
世界に圧倒され心は閉ざされる。
夜は孤独を噛み締めながら、暗黒の闇の中に
心は解き放たれる。
空に瞬く星と見上げる自分の間に存在するのは
闇だけである。それを「透明な渾沌」と表現し、
運命の永遠の輪廻に結びつけている。
しかも輪廻を直観させるのは、落日であり、
死であるという。
子供の本能(魂)は「通りゃんせ」の詩に、
運命の輪廻を歌い上げると岡本氏は読む。
「往きはよいよい、帰り(=死)はこわい。」
それでも、闇(=帰り)を通らないと
明日を生きられない。その覚悟を詩で問う。
ゴッホの絵に夜の衝撃を感じ、ビザンチンの
金一色の夜に生命の根源を観る天才の直観は
この哲学的な言葉に集約されると思う。
◆ 有無相生