◆老子小話 VOL 523 (2010.11.20配信)
地球上の人間が、
ほとんど精神に狂いを生じていながら、
自分ではそれに気づかずにいる。
(永井龍男、「私の眼」)
短編の名作と車谷長吉さんが紹介された、
「青梅雨」(新潮文庫)の一編の言葉です。
別の箇所で、人間はおのれの正気を
他人の正気と比較して確かめるという。
狂っていると他人がいうものは
他人に合わせて狂っていると思う。
しかし、他人が狂っていれば、
それに合わせる自分も狂ってくる。
狂っているひとは自分が狂っている
とは決して思わない。
こうして現代は、狂気が伝播する。
今の菅政権も同じことが起こっている。
狂いの伝播に一喝を入れる人がいない。
倒壊に向け、坂を転げ落ちる勢いである。
紅茶のスプーンがかすかに鳴り続ける音。
「私の眼」は、不気味な終わり方をする。
確かに、短編だけどすごい迫力がある。
世間の価値観を原点にすると狂いに気づかない。
老荘は人間を超えた宇宙の摂理を原点にする。
狂いようがない原点で無限に向かって流れている。
有無相生