◆老子小話 VOL 522 (2010.11.13配信)
何處秋風至,
蕭蕭送雁群。
朝來入庭樹,
孤客最先聞。
(劉禹錫、秋風引)
何れの處よりか秋風至り,
蕭蕭として雁群を送る。
朝來庭樹に入り,
孤客最も先に聞く。
秋も深まり、憂愁の風が吹くこの頃。
中唐(AD772年-842年)の政治家
劉禹錫(りゅううしゃく)は左遷され
同じ心境を詠みました。
孤客とはひとり旅をするひとのこと。
「この秋風はどこから吹いてくるのか。
物寂しげに、雁の群れを見送っている。
朝方から庭木に吹いているのを
一人旅の私が一番先に聞きつけた。」
秋の風は寂しげに枯葉を舞い上げる。
孤独な旅人は風に自分を重ねる。
自分はどこから来てどこに行こうとするのか。
あてどのない旅だが、風が旅の友となる。
そんな友の訪れに自分が真っ先に気づいている。
芭蕉の句「野ざらしを心に風のしむ身かな」は、
行き倒れを覚悟する旅人が身に沁みて感じる
秋風を読んでいる。
中国の詩人も芭蕉も風と一体になって旅をする。
人生の憂愁は、風と共に来たり風と共に消える。
有無相生