◆老子小話 VOL 521 (2010.11.06配信)

ペンと思索の関係は杖と歩行の関係に近い。

(ショウペンハウエル、著作と文体)

 

「読書について」(岩波文庫)の言葉です。

若いときは、歩行は完璧に行えるので、

杖は要らない。思索(歩行)は自由に行え、

ペン(杖)を借りずにはかどります。

老いると、歩行はままならず杖にすがり、

ペンに頼る。ペンは「書くこと」であり、

思索の結果を言葉にまとめることです。

一言でいえば、「書く前によく考えろ」と

いうことです。そのわけは、考えた以上の

ことは書けないからです。

書くために考える(金銭のために書く)人は、

思索が疎かになるという。

思索で重要なのは、何を考えた(書く素材)

ではなく、どのように考えたかである。

それが思索の独自性という。

小説家なら、内容の奇抜さで勝負するのが

三文小説家で、ありふれた日常に思想を

織り込むのが一流小説家といえましょうか。

読書へのアドバイスは、人生短いから、

時間と力を無駄にする悪書を読むなという。

では悪書とは何か?

それは金銭目当てに書かれた本である。

160年前のドイツも今の日本も変わらず、

悪書で溢れる世の中だったようで、

ショウペンさんの声が耳に痛い。

言葉になる前の思索を大切にするのは

老荘に通ずる。

言葉にすると道は化石となり命を失う。

 

有無相生

 

 

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