◆老子小話 VOL 520 (2010.10.30配信)

白露や 茨の刺(はり)に ひとつづつ

(蕪村)

 

蕪村の自然を観る優しい目を

この句から感じることが出来ます。

茨のとげを細かに見ることは

時間に追われる今のひとはあまりない。

草の露に気付いても刺の露には気付かない。

あたかも神が、小さなきらめく水滴を、

とげの一つ一つに置いていったように

茨の茎のあちこちから、細かな光が

目に飛び込んでくる。

その正体を見極めようと目を近づけると、

何と刺の先に光の粒がついているではないか。

光の粒の正体は、小さな小さな水滴だった。

蕪村のこの発見は、自然の中の細やかな生を

見逃さない鋭い観察眼にある。

そのとき、小さな水滴を吸い、命を繋げる

蟻の姿を見つけたかもしれない。

「白露が茨の刺の先に付いている」情景を

詠んでいますが、そこに自然の不思議に

感動する心の動きが現れているようです。

小さな露はひとの命と同じです。

刺がつらい人生なら、それに一所懸命

くっ付いている露のような命もまた、

よく観ると光り輝いて見える。

こうして、蕪村の俳句から心温まる安堵を

感じることができます。

 

有無相生

 

 

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