◆老子小話 VOL 509 (2010.08.14配信)
夏草や つはものどもが 夢の跡
(芭蕉、奥の細道)
夏休みに訪れた平泉の思い出として
この一句をお届けします。
芭蕉は、義経が自害した高館を訪れ、
奮戦した兵士(つはもの)たちの夢を
偲んでいます。
「国破れて山河あり、
城春にして草青みたりと、
笠うち敷きて、時のうつるまで
泪を落とし侍りぬ。」
と、中国の詩人杜甫の「春望」を
引いて、目の前の情景に重ねています。
夏草を眺める自分の夢もまた、
この地を訪れる後世の人によって、
夏草から連想されるのだろうか?
そんな思いが芭蕉の脳裡をかすめた
かも知れない。
夢を抱いた人が生きた地を実際に訪れて、
「夢の跡」を辿ることができる。
芭蕉の旅も現代人の旅も同じである。
土地には土地特有の気があり、
その気に触れて感性が始動する。
この休みに旅のよさを味わいませんか。
有無相生