◆老子小話 VOL 505 (2010.07.17配信)

指窮於為薪、火伝也。

不知其尽也。

(荘子、養生主篇)

 

指は薪を為(すす)むるに窮するも

火は伝わる。

その尽くるを知らざるなり。

 

(火を焚こうとして指は薪を前に押し出す。)

指で薪を押し出すことができなくなっても、

火は伝わっていく。

火は燃え尽きることは無い。

 

「荘子」養生主篇の最後の言葉であり、

「難解な断章で、読み方も意味も落ち着かない。」

と金沢治先生は註している。(荘子、岩波文庫)

燃えるような様子を思い浮かべ解釈するしかない。

福永光司先生は、火は命に喩えている。

(荘子、朝日新聞社)

薪は、先端から燃えていき最後に燃え尽きる。

指は薪をくべるが最後は熱くなり窮する。

そして次の薪に火は伝わり、火は燃え尽きない。

薪はひとりの一生であり、火は命である。

個人の命は、次々に引き継がれ後世に伝わる。

柳田邦男氏がTVで語られたが、

自死されたご次男は、今も氏に語りかける。

ご次男の命(火)は氏の心に燃え続けている。

そして、氏の言葉を通して火は引き継がれる。

荘子は、薪の消滅(死)に悲しむのではなく、

薪の働きに心を向けよという。

火をつないでいくには、何をしたらよいか?

じっくり考えてみてください。

 

有無相生

 

 

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