◆老子小話 VOL 504 (2010.07.10配信)

形人而我無形、則我専而敵分。

我専為一、敵分為十、

是以十攻其一也。

(孫子、虚実篇)

 

人を形せしめて、我れに形無ければ、

則ち、我は専(あつ)まりて、敵は分かる。

我れは専まりて一を為し、

敵は別れて十と為らば、

是れ十を以って、その一を攻むるなり。

 

孫子は、戦いに勝つための秘訣を授ける。

10の兵力を持つ、敵と味方が拮抗する場合を考える。

敵の兵力を10等分に分割することできるなら、

味方の10の兵力で、敵の1の兵力を攻めるので、

勝てる可能性が高い。当たり前の話である。

しかし、陣形を固定化し、敵の兵力が分断される

ことが前提となる。

「無形」は、機動的で陣形が定まらないことをいう。

敵を谷間の道に誘い込めば、前後にしか動けない

細長い陣形を敵は取らざるをえない。

味方は、谷間を見渡せる丘の上から攻めてもよいし、

正面と背後から攻め込んでもよい。

「無形」故、どのような陣形も取れ、敵はそれに怯える。

人生を戦いに喩えるなら、敵は生活を脅かすリスクである。

リスク分散し大ごとになる前に潰すのが、孫子の教えである。

そのために自分の心を無形にしようというのが老子である。

無形の極では、勝ち負けの意識すら薄れてくる。

 

有無相生

 

 

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