◆老子小話 VOL 502 (2010.06.26配信)

永遠も無限も人間の尺度に非ずと心得て

恋人の心理を小数点三桁まで憶測するのが喜び

夜はゴーヤで安い赤ワイン

(デザートには多分バナナ)

風呂と布団にスキンシップの極意を極め

あとは日々の細部にビッグバンに

連なるものを探すだけ

(谷川俊太郎、無口)

 

ひょんなことから「夜のミッキーマウス」(新潮文庫)と

出会い、そのなかの「無口」が大変気に入りました。

そのわけは、老子の生き方が目に浮かぶからです。

それに、表現がお洒落で、リズミカルで軽快です。

詩の全部お届けできないのが残念です。

老子は、永遠、無限を「大」と呼びます。

「大」は人間の想像を超え、「道」に繫がります。

道は、宇宙を含むマクロな大自然の中だけでなく、

ミクロな人間の内にも無限に広がっている。

自分の心さえわからないのに、他人である恋人の

心がわかるはずがない。

0.1%の心のすれ違いが別れを生んだりする。

風呂でくつろぎ、布団の肌触りの中で眠りにつく。

食事は苦味の利いたゴーヤと渋みのあるワイン。

苦味も渋みも自分の人生と同じ。

日々の繰り返しは何の変哲も無いように見える。

でも底には、無限の過去から無限の未来に連なる

道の真理が流れている。

つい最近、NHK100年インタビューで谷川さんが、

話されたのは、まさに老子の言葉でした。

意味を持つ言葉と言葉にならない「言葉」を

分かたない世界(有と無の渾沌)が真の世界だと。

是非、「無口」をご堪能ください。

 

有無相生

 

 

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