◆老子小話 VOL 495 (2010.05.08配信)

大隠隠朝市。

小隠隠山林。

(山外)

 

大隠は朝市に隠れ、

小隠は山林に隠る。

 

今回は、禅林句集(岩波文庫)から拾いました。

朝市(ちょうし)は、人の多く集まる所、

つまり市中のことです。

「大物の隠者は俗世間の中で超然と暮らし、

小物の隠者は人里離れて暮らす。」

くだいて言うと、

「本物は形にこだわらずに本質で勝負する」

となるでしょうか。

ひとは己の弱さを知っているので、

まずは形から入って孤高の環境に身を置き、

心身を鍛えようとします。

しかし本物の隠者は、環境に関わらず孤高を貫けます。

「桃源の路次の細さよ冬ごもり」

京の町に住みながら隠者の眼を忘れなかった、

大隠、蕪村の句です。

冬になると寒くて外に出るもの億劫になる。

狭い路地から空間的に隔絶されると同時に、

心理的に街から隔絶される様子を詠んでいる。

だけど、孤高には孤高の悦びもある。

桃源郷にいるように、何物にも邪魔されずに

平和な時間と自由な空間が身を包むからである。

厳しい環境に晒される日本人ですが、

己の桃源郷さえ持っていれば、

そこに逃げ込む(冬籠りする)余裕を残せます。

 

有無相生

 

 

戻る