◆老子小話 VOL 488 (2010.03.20配信)

自分がどんな存在だか知る。

それが科学の目的です

(佐藤勝彦)

 

2010年3月18日付け日経新聞夕刊

に載った佐藤先生の言葉をお届けします。

先生は宇宙論で有名ですが、宇宙は無から

生まれたと話されます。

自分の存在、いや人間の存在を137億年の

宇宙の歴史の中で捉えれば、あらゆる偶然に

支えられて今の自分があることに気付きます。

宇宙の歴史を学ぶことは、結局自分の由来を

学ぶことになります。

この地球上に今自分が存在できたのは、

地球上に水と空気が生まれ、生命が誕生し、

微生物から進化して魚から爬虫類、哺乳類、

猿人から人に至る長いバトンリレーのお陰です。

宇宙の始まりの「無」は揺らいでいて、

無と有の世界を行ったりきたりするようです。

科学が説明できるのは、この宇宙の、無から

今に至る過程であり、その終局像はわかりません。

宇宙を水中の気泡と考えるなら、膨れながら浮かび、

水面ではじけて終わるのだと思います。

ただ気泡は水中で無数に生まれているので、

別の宇宙が生成消滅を繰り返している状態です。

それをマルチバース(多元宇宙)と呼びますが、

そこは物理法則が異なるので観測できないようです。

まさに宇宙は、老子のいう無の世界の中に、

複数の無の世界が広がる曼荼羅図のように思えてきます。

「天下の万物は有より生じ、有は無より生ず。」

(老子第40章)

 

有無相生

 

 

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