◆老子小話 VOL 481 (2010.01.30配信)
誤謬というのは(中略)
結局逆説的な欲望であるかもしれない。
(村上春樹、「中国行きのスロウ・ボート」)
小川洋子さんに誘われて「中国行きのスロウ・ボート」
(以下、スロウ・ボートと略)を読んだ。
読書というのは、友達の友達を知るプロセスに似ている。
感性が繋がれるというか論理が繋がれるというか、
ある本にはその本の友達が必ずいて、読めば。
その偶然性の繋がりを辿るため、別の本を読む。
スロウ・ボートの僕は、付き合っていた中国人の
女子大生に、「本当に間違ったとしても、心の底では
そう望んでいたからよ」と言われた。
誤謬というのは、逆説的な欲望であるというのは
一概に否定できない。
会いたくない人が出席するイベントの日程を覚え違い
したために、イベントに参加できず会わずに済んだ場合、
会いたくない欲求が記憶違いを引き起こしたともいえる。
心のイメージと現実の姿はあまりにかけ離れる。
村上さんは、「どこにも行けるし、どこにも行けない」という。
出口は見えるが、出口から出て行けない。
青春の悩みが出口探しなら、
人生の悩みは、出口への道の遠さなのかもしれない。
走ることはない。
スロウ・ボートに揺られ、ゆっくり行こう。
有無相生