◆老子小話 VOL 473 (2009.12.05配信)
誕生の時には、あなたが泣き、
全世界は喜びに沸く。
死ぬときには、全世界が泣き、
あなたは喜びにあふれる。
(中沢新一、「三万年の死の教え」)
老僧が小坊主に生死の意味を教える会話から
本書は始まるが、老僧はこの言葉で締めくくる。
生まれた途端にひとは死と向き合わされる。
だから、生まれることは喜ばしいことではない。
誕生の「おぎゃー」は、将来の死老苦を嘆く
悲しみの泣き声かも知れない。
でも、親を含む世界はその誕生を喜ぶ。
反対に、死ぬとき世界は悲しみにくれるが、
本人は喜びにあふれて死ねるように
生きるのが一番よい生き方という。
死の向こうにある「心の本性」に触れられてこそ、
「生きている」といえる。
オーストラリアのアボリジニは
青空の果てに巨大な宇宙の力の流れを見る。
その流れの中で発する叡智の光が「心の本性」である。
生きながらその光を感じることができるなら、
死は終わりでなく、永遠の流れの始まりとなる。
ひとは死ぬと星になるという。
星の光におのれの心を見つければ、
少しは勇気が湧いてくるかもしれない。
有無相生