◆老子小話 VOL 469 (2009.11.07配信)
此亀者、寧其死為留骨而貴乎。
寧其生而曳尾於塗中乎。
(荘子、秋水篇)
この亀は、むしろ其れ死して
骨を留めて貴きをなさんか。
むしろ其れ生きて尾を塗中に曳かんか。
楚の王様より大臣の地位に招かれた荘子が、
それを断る言葉である。
この亀は高貴な亀で、死んで3000年も
箱に入れられて聖堂に保管されている。
「亀の身になって考えると、殺されて、骨を留めて
大事にされるのがよいか、はたまた、生きて
泥の中で尾を引きずって自由に遊ぶ方がよいか」
と、招聘状を携えた王様の家来に問いただした。
亀は小さな体から大きな身体へと時間をかけて成長する。
亀の甲羅はよろいのように硬く重く、古代中国では、
甲羅を焼いてその割目で吉凶占いをしていた。(亀朴)
占い結果は大事に保存されていたのでしょう。
そんな亀朴用に焼かれる運命にある高貴な亀と大臣の地位を
重ねあわせ、自然本来の亀のように、泥の中で尾を曳いて
自由に這い回るほうがずっとよいという答えを出しました。
人生観は人それぞれですから、華々しく太く短くという
生き方もあれば、細く長くという生き方もあります。
所詮、太い細いは人によって異なるので、長く生きていれば、
それなりに色んな経験ができてよいと思えばよいでしょう。
「尾を塗中に曳く」という故事のもとになっている話でした。
有無相生