◆老子小話 VOL 466 (2009.10.17配信)
個性とは、「一般性の先で破綻する」
という形でしか訪れない。
(橋本治、「いま私たちが考えるべきこと」)
橋本さんの言葉は読者の心を惹き込む。
「いま私たちが考えるべきこと」(新潮文庫)
では、「個性はそもそも傷である」に惹かれた。
一般性の先で破綻する結果、傷を負う。
学校教育は、一定レベルのカリキュラムを
生徒に与え一般性を求めるシステムである。
その学校教育に、「個性を伸ばす教育」を
求めるのはおかしいと主張する。
個性は一般性すら達成できない「破綻」である。
その破綻のために達成レベルの設定が必要なのに、
学校教育ではそれがあいまいになっている。
つまり、破綻しているのは教育システムの方である。
一般性があいまいになったので、「破綻」は生まれず、
個性も生まれない。 なるほど。 なるほど。
じゃあ、これからどうすればよいと読者は考える。
過去には正解があった時代は終わり、
答えのない世界(=近代)に入っている。
そこでは、「私」という個と、「私たち」という個(=他人)
が協力して正解を見つけていかなければならない。
結局、自分の頭で考えるしかないと橋本さんはいう。
「私」と「私たち」の分断が、自己中の人間を生み、
それがあたかも個性的と言われているが、
自分のことだけを考える人間には「破綻」がない。
個性の重みを考えさせられた言葉であった。
記:有無相生