◆老子小話 VOL 465 (2009.10.10配信)
善游者溺
善騎者墜
(淮南子、原道篇)
善く游(およ)ぐ者は溺れ
善く騎(の)る者は墜(お)つ
泳ぎの上手いひとはよく溺れる、
乗馬の上手いひとは
よく落馬して死ぬ。
「禅林句集」に出ていた言葉ですが、
原典は、淮南子(えなんじ)です。
ひとは、自分の得意とする所で失敗する。
自分が得意であると自覚し、自分の技で難関を
乗り切れると思ってしまうところに落とし穴がある。
ことにあたるときは、初心を忘れないことです。
日本なら、「弘法も筆の誤り」といえましょうか。
弘法さんの場合は、本人が書の達人と自覚するか
否かに関わらず、周囲の凡人が達人の失敗を見て、
凡人なら失敗は当たり前で、まずやってみようという。
淮南子の言葉は、本人は得意であると自覚しており、
その思い上がりが災いを招くと戒めている。
一言で言えば、常に緊張感を持てということで、
「弘法も筆の誤り」とは意味が反対のようです。
2009年度ノーベル平和賞は、何だか後味が悪かった。
泳ぎが上手い大統領のように見えるが、核廃絶という
難事業で溺れてしまうかもしれない。
結果が出る前に、「緊張感を持て」と先行投資する
感が強い。皆様はどのように思いましたか?
記:有無相生