◆老子小話 VOL 461 (2009.09.12配信)

犬肉は古くから祭祀の犠牲として

も使われていた。

古代中国語の「献」という字は、

「犬を宗廟に供える」という意味だった、

(張競、中国料理の文化史)

 

中華料理が大好きな私は、

中国の歴史の中で、その料理がどのように

変化していったのか知りたくて、

「中国料理の文化史」(ちくま新書)を読んだ。

大昔の中国には、犬食いの習慣があって、

遺跡から犬の骨が多く見つかっている。

神様のお供え物にするものは、神様も

人間と同じとみなし、同じものを食べるだろうと

いうことで、犬の肉を捧げている。

献身の献の字に犬の字が入っている理由が

この本でわかった。

そういった犬食いの習慣はいつの間にか消えた。

その理由は、異民族の侵入によるとみている。

北方からの異民族は遊牧民で、狩猟用として

犬を大事にしたので、決して食べなかった。

異民族によって南方に追われた漢民族は、

広東で犬食いの習慣を残した。

「羊頭を掲げて狗肉を売る」という言葉ができた

春秋時代には、犬の肉が食われていたわけである。

中国の歴史が変わるように、中国料理の食材や

レシピーも変わっていく様子をこの本から窺われる。

犬食いの習慣が朝鮮半島に残っているのも、

漢民族の習慣が朝鮮に伝わり、異民族の支配を

受けなかったことによるのかもしれない。

中華料理を何気なく食べているけれど、そこには

ながーい歴史の風化の跡が映し出されている。

 

有無相生

 

 

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