◆老子小話 VOL 459 (2009.08.29配信)
およそ天地の際に
生きとしいけるものは皆虫ならずや、
それが中に人のみいかでか貴く、
人のみいかむことにあるにや。
(賀茂真淵、国意考)
車谷長吉氏の「私の小説論」で見つけた言葉です。
この世の中の生き物はすべて虫けらなのに、
どうして人間だけが貴いといえるのかと疑う。
自然の中で人間だけを特別扱いする権利はない。
これは、荘子の万物斉同に繋がる考えでしょう。
自然では、自分の命は他の命のために役立つ。
草を虫が食い、虫を鳥が食うように。
知能は人間だけが持つので尊厳があると
してきたのがこれまでの歴史です。
しかし、自然の仕組みを調べれば調べるほど、
どんな虫けらにもそれなりに知能があり、
己の生存を育んでいることがわかってきた。
人間だけが、自らの知能が産んだ兵器や
環境破壊で自らを滅ぼそうとしている。
国学者の賀茂真淵さんは、日本古来の自然を
天皇(すべらき)中心にもっていこうとしました。
それが天皇を国家元首と定める帝国憲法に
繋がり、大戦へと入るわけです。
天地自然をどう捉えるかで、危険な道に
足を踏み入れる場合もありました。
国民は、主権在民であることを自覚し、
自らの選択により、この国の自然が
侵されないようにする責任があります。
自然とは、歴史や文化であり、
政治や社会や環境と多岐に渉る。
記:有無相生