◆老子小話 VOL 457 (2009.08.15配信)
知忘是非、心之適也。
不内変不外従、事会之適也。
始乎適而未嘗不適者、
忘適之適也。
(荘子、達生篇)
知の是非を忘るるは、心の適なり。
内に変ぜず外に従わざるは、事会の適なり。
適に始まりて、未だかつて適せずんばあらざるものは
適を忘るるの適なり。
今回は、「快適さ」のお話です。
良いか悪いか価値判断を忘れているのが心の快適。
内なる心に動揺なく、外物に引きずられないのは、
事物への対応の快適さ。
最初から最後まで変わらない快適さは、
快適すら忘れている自適の快適である。
長所・短所を調べないと良さがわからないのは、
本当の快適とはいえない。
CMで、他社商品と比較し、商品の魅力を
説かれてもピンとこないのと同じである。
ユニクロのフリースじゃないが、
着心地のよさとシンプルなデザインは、
いつでもどこでも着ていける「事会の適」といえる。
でも、最高の快適さは、快適であることすら忘れる。
これまたメルセデス・ベンツのCMじゃないが、
乗っていただければ、価値は自ずとわかるという。
高いから価値があって当たり前といいたいが、
老荘流CMは心に優しく響く。
記:有無相生