◆老子小話 VOL 456 (2009.08.08配信)

棄千金之璧、負赤子而趨、何也。

林回曰、

彼以利合、此以天属也。

(荘子、山木篇)

 

千金の璧(たま)を棄て、

赤子を負うて趨(はし)るは、何ぞやと。

林回曰く、彼は利を以って合し、

此れは天をもって属するなり。

 

林回が国から逃亡するとき、高価な宝石を棄て

赤ん坊を背負って逃げました。

あるひとは、「赤ん坊を売っても高い値段で

売れるわけでなく、何故小さくて高価な宝石を

持って逃げなかったのか」と聞いた。

林回は答えた。

「宝石とは利益、打算で繋がるものだが、

赤ん坊とは運命的な必然で繋がっている。

だから、利を以ってこの必然に代えるわけには

いかない」と。

打算で結びついた者は危機存亡に直面すると

容易に自分を見捨て離れます。

運命的な必然で結ばれた者は、危機存亡でも

最後まで自分をかばってくれます。

信じるに値する人間かどうかは、自分が本当に

困ったときに何をしてくれたかで決まります。

人生でのめぐりあいは大切にしても、

打算抜きの継続的なつながりが、信頼を深め、

運命的な必然を生んでくれるのでしょう。

 

記:有無相生

 

 

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