◆老子小話 VOL 453 (2009.07.18配信)

何もないこと、空っぽであることこそ

この国の原点であるといわなくてはないらない。

(長谷川櫂、和の思想)

 

長谷川櫂氏の「和の思想」(中公新書)より、

日本文化の原点を語る言葉をお届けします。

日本古来のものは何も無かったからこそ、

和という日本文化の原点を築けた。

和食、和服とかの和は「日本」を表すが、

この和は、西洋をお手本にした明治時代以降に

使われ始めたにすぎず、本来の和は、

お互いに異質なものを共存させることだったと、

長谷川氏はいいます。

しかも、和を積極的に生み出すため、日本人は

時間的空間的な「間(ま)」を使いこなしてきた。

例として、芭蕉の、「古池や蛙飛び込む水の音」

を挙げる。古池に飛び込む蛙を見たわけじゃなく、

蛙が飛び込む水の音を現実に聞いて、

古池を心象(イメージ)している。

現実世界と心象世界を共存させるのが、

「古池や」のあとの「間」であることを説明する。

「間」は、俳句だけでなく、生け花、書、住まいなど、

この国の暮らしの至るところで使われている。

間を設けず、ぎすぎすと詰め込むことを、「間抜け」

間を入れる場所を取り違えることを、「間違い」

上手く合うことを「間に合う」という。なるほどと合点する。

この本の圧巻は、「間」を持つに至った理由である。

それが、蒸し暑い日本の夏であると、徒然草第55段を

根拠に言い当てているのが非常に面白い。

夏真っ盛りの日本ですが、皆様におかれましても、

上手く間を保ち、快適に過ごされますようお祈りします。

 

記:有無相生

 

 

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