◆老子小話 VOL 450 (2009.06.27配信)

可哀相にという無意味な一語は、

もう愛でも憎悪でも嫉妬でも

むすびつきようのなくなってしまった

他人に捧げる手向けの花

のようなものなのだろうか。

(松浦寿輝、あやめ 鰈 ひかがみ)

 

松浦さんの小説にはまり、上記作品の

「あやめ」からの抜粋をお届けします。

自民党内から「もう総理を辞めろ」

と言われるまで権威を失墜する麻生さん

を見て、「可哀相に」というしかない。

可哀相は、信任する総理への同情からではない。

情けないというか、あわれの気持ちからである。

昨日急死したマイケル・ジャクソンも「可哀相」である。

世界一有名で世界一孤独な人生の結末だった。

「可哀相」は、その人間に対し言葉を失ったときに、

最後に心の深みから湧く言葉と松浦さんはいう。

馬鹿々々しいけどそれしかない。

冥界に旅立つひとへの手向けの言葉ともいえる。

ひとの頂点に立つと、重圧を周囲から受ける。

重圧に押しつぶされそうな時に冥界が見えてくる。

あやめは、冥界の入り口に咲く花である。

「もうこの世には戻らない」とあやめに告げたとき、

「可哀相に」という囁きが返ってくる。

マイケルは、あやめに何を語りかけたのであろうか?

何を語りかけても、この言葉が返ってくるだけである。

 

記:有無相生

 

 

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