◆老子小話 VOL 430 (2009.02.07配信)
蹄者所以在兎。
得兎而忘蹄。
言者所以在意。
得意而忘言。
(荘子、外物篇)
蹄は兎を在(とら)うる所以、
兎を得て蹄を忘る。
言は意を在うる所以、
意を得て言を忘る。
わな(蹄)は、うさぎをつかまえる道具で、
うさぎをつかまえてしまったら、用はなくなる。
言葉は意味をとらえる道具で、
意味をとらえてしまったら、用はなくなる。
ひとは、時々、言葉にこだわって、
言葉が意味するものを忘れる。
道具に気を取られ、道具で何をしようと
していたのか忘れるのと同じだ。
先週ご紹介した「詩歌の森へ」を、
最後の15ページほど読み残し、
電車に置き忘れ、がっかりしていた矢先、
上の荘子の言葉で慰められた。
読めなかった言葉は3%あるが、
すでに読んだ97%の言葉で、
著者の意を汲めればよいではないかと。
古今東西、人の感情は大して変わらない。
だからこそ、意が汲めて共感できる。
共感のチャンスは無限にあると。
言葉のわかりにくさで、そのチャンスを逃すのは
勿体ないと著者は教えてくれた。
記:有無相生