◆老子小話 VOL 423 (2008.12.20配信)

東京の東京らしきは富士を望み得る所にある。

われらは徒に議員選挙に奔走する事を以て

のみ国民の義務と思わない。

われらの意味する愛国主義は、

郷土の美を永遠に保護し、

国語の純化洗練に力むる事を以て

第一の義務なりと考うるのである。

(永井荷風、日和下駄)

 

江戸から明治になり国の近代化で、

昔の東京の美しさを破壊してきた愚行を

今から90年前に荷風は指摘しています。

政治選挙のために駆け回るのが愛国心じゃない。

過去から伝えられた日本の美しさを保全し、

文化を次の世代に伝えていくのが、

本当の愛国主義だろうと説いている。

「名月や富士見ゆるかと駿河町」(素竜)

現在の日本橋から富士の景色が見えていた。

橋の上に高速道路を作り、川を埋め、

東京の街を改造し、本来の風光の趣を

破壊して今に至っています。

自動車・電気製品などを沢山作って輸出して、

ひたすら物質的な豊かさを追い求めてきましたが、

本来の日本の良さに目を向ける時機となったようです。

今回の景気悪化は考え直す良い契機でしょう。

米国に追随し、ひたすら利潤を追い求めた企業。

国民の福祉・医療を忘れた政治。

山野を切り崩し道路を作り続けたお役人。

明治から企業・役所・政治の本質は変わっていません。

これを変えるのは国民の選択です。

将来を考えるのは、今(現世)に苦しむ国民だけでしょう。

 

記:有無相生

 

 

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