◆老子小話 VOL 418 (2008.11.15配信)
物いへば 唇寒し 秋の風
(芭蕉)
「人の短をいふ事なかれ
己が長をとく事なかれ」
が冒頭に附いている。
黄葉も終わりに近づき、
秋風が身に沁みる頃となる。
何かと不満を口に出せば
唇を寒くする秋風だが、
それが人の悪口だったり、
自分の自慢だと、他人が見ても、
見苦しく感ずるものよと詠う。
「唇寒し」は、本人が感じる寒さと
唇から吐く言葉を聞く他人が感じる
心の冷たさをかけているように思える。
この句を捧げたいのは、
現在の政治家と官僚である。
ご本人たちは、ちっとも寒くないと
思っているかもしれない。
ただ、彼らの言葉を聞く国民が、
その場限りの対応の無責任さに、
心を寒くしているのが実情だろう。
不景気対策で、内定を取り消す企業
も「唇寒し」の同類である。
記:有無相生