◆老子小話 VOL 414 (2008.10.18配信)
折れつくす 秋にたたずむ 案山子かな
(蕪村)
稲穂が刈り取られた後の田んぼで、
ひとり寂しくたたずむ案山子の姿である。
晩秋の風景の一つであった。
案山子を今はもう見られないかもしれない。
目玉が描かれた風船がカラスやスズメを
追い払っているのを見かける。
収穫のあとの、人恋しい秋である。
案山子には、お疲れ様と言いたい。
草木の枯れた寂しい秋を、
「折れつくす」と詠んだのが面白い。
折れ尽きた景色の中で、案山子がかろうじて
立っている姿が、寂しさを強調する。
人生の秋にかかる自分をその案山子に投影する。
立ち姿は、地面に垂直に立っているのではない。
斜めに傾きつつ、倒れず棒に支えられている。
その棒が何なのかは人それぞれである。
家族の愛か、神の愛か、恋する人への想いか。
山野にたたずむ案山子をながめ
感傷的になる季節になった。
記:有無相生