◆老子小話 VOL 411 (2008.09.27配信)
発於此而応於外者唯情。
(列子、説符第八)
此に発して外に応ずるものは、
唯情なり。
すべてわが身から出たことが
相手にそのまま反応するのは
人間の心情にすぎないからである。
ある人が斧を失くして、
隣家の息子を疑った。
そうしたら、その息子の歩き方、言葉遣い、
態度のすべてが斧を盗んだように見えてくる。
ところが、たまたま自分の家の庭を掘っていたら、
失くした斧が出てきた。
後日、隣家の息子を見ても、歩き方も言葉遣いも
斧を盗んだように見えなくなった。
隣家の息子への疑いは、
自らの過ちから発したものである。
疑いは感情であり、事実ではない。
感情は、相手を事件の主人公に仕立てる。
いつの間にか、事実となって独り歩きする。
誰もが陥る可能性のある罠である。
人を疑う前に、自分の愚かさをふりかえりたい。
記:有無相生