◆老子小話 VOL 409 (2008.09.13配信)

父為子隠、子為父隠。

直在其中矣。

(論語、子路第十三)

 

父は子のために隠し、

子は父のために隠す。

直きこと其のうちに在り。

 

正直者Aの父親が羊をごまかしたとき、

Aは自分の父親を警察に届けた。

Aの正直さをほめてあげるべきか?

父親は、Aのことを思って羊をごまかした。

生活に困っている子Aを見て、

羊の頭数を少なく役所に届け、

税金が安くなるようにしたかもしれない。

父親の子を思う愛情を考えれば、

父親を警察に届けないのがAの正直ともいえる。

正直さは、自然に行われるのがよい。

教えられた通りに、杓子定規に倫理を守るよりも、

相手を思いやり、「何をすべきか」を選択する。

汚染米の不正転売に目をつむるのは、

経営に苦しい事業主を思えば、有り得る話。

でも転売されて被害を被る消費者を思えば、

隠すことはできない。

結局相手をどこまで広く考えるか、

当の相手が何を考えて道を曲げているのか、

いろんなことを考えて行動すべきで、

単純に正直のひとことで動くと誤まる。

信頼を失うと、正直もうそに見えてくる。

でも、正直に努めないと信頼は得られない。

政治家はこの現実が本当にわかっているのか。

 

記:有無相生

 

 

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