◆老子小話 VOL 403 (2008.08.02配信)

愛民、害民之始也。

為義偃兵、造兵之本也。

(荘子、徐無鬼篇)

 

民を愛するは、民を害するの始めなり。

義を為し兵を偃(や)むるは、

兵を造(おこ)すの本なり。

 

魏の武候が、徐無鬼先生に聞いた。

「民を愛し正義を行い、戦争を止めて

世を平和にしたいが、いかがなものか?」

それに対し先生は、「不可」と答えた。

愛と憎悪は表裏一体であり、

愛を強調するあまり、相手をだめにする。

正義と平和を強調するあまり、戦争を

始めたりする。

広島・長崎への原爆投下は、戦争終結という

平和のためだと米国は主張する。

しかしその後、平和のための軍拡競争が始まった。

テロへの報復として、アフガニスタン、イラクで

戦争を開始した。 愛する米国民への不当な

攻撃に対し正義を示すために。

愛とか、正義とか、平和とか

人為的な理想枠を作ってしまうと、

その枠から外れたものは排除すべき悪となる。

でも、生きていることが、人為を超えた無境にある

とすれば、そんな枠は独りよがりの論理に見えてくる。

そういえば、「振り込め詐欺」の手口も愛を装っている。

年金の還付金をもらえる連絡は親切そのもの。

でも年金すら払わないところがなぜ連絡をしてくるのか?

うつくしい話は要注意である。

 

記:有無相生

 

 

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